遙かなるテームズの流れ     

 テムズ河は穏やかに蕩々と流れる。
この河の源流が何処なのかは知らないが、地図で見ると二つの河がオックスフォード近くで交わり、ウインザーを経てロンドンへ至る。 源流と海面の高低差が200mしか無いと言うから、流れが穏やかなのは当然だ。 少なくともウインザーからグリニッジの風景や流れを見ていると、僕の頭にはエルガーの『威風堂々』第4番 ト長調がイメージされる。 もっとも、これはロンドンにいた頃、テレビやラジオ、コンサートなんかで『ルール・オブ・ブリタニア』などと良く聴かされた曲だからなのかも知れない。 ただ、スメタナの連作交響詩『我が祖国』で描写されるモルダウの情景とはひと味違う。

 このサイトをご覧頂いた方から時々、いつになったらテームズ河のことが出てくるの?って質問を受ける事がある。 HPの題名が、『遙かなるテームズの流れ』となっているのだから当然の疑問であると思う。 この答えは実の所、僕にも判らない。 何と無責任なと言われそうだけれど、ひょっとしたらどっかで出てくるかも知れないし、永久に出て来ないかも知れないと謂うのが偽りのないところだと思う。
 では何故こんな題名にしたのか。
旅行滞在記編でもちょっと触れたが、ロンドンにいる頃読んだ本に森有正氏の『遙かなるノートルダム』と謂う本があった。 もう内容は忘れたが、このテーマがいたく僕の脳裏に残っていたからなのか、このような題名を思い付いた。
テームズ・・・・これは彼地での僕の色んな体験や出来事の象徴に過ぎない。

 ところで、僕はこれまで何度もテームズと書いているものの、実際のこの河の名前はテームズではなくテムズが正しい。 英国へ旅して、誰かにこの河は何て名前と聞いてみると、その見知らぬ人がもし英国人ならテームズでなくテムズと発音するに違いない。 何故、僕がテームズと書いたかと言うと、一番手っ取り早い答えは、僕自身テームズと発音すると思っていたからだ。 セントラルのパトリシア先生からテムズと教えられても、僕にとってこの河のイメージはテームズであってテムズではない。


                                 
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