マストベアリングのメンテナンス

 クランクアップタワーを建搭してから2020年現在の時点で25年が過ぎた。
これまでに行ったタワー関連のメンテナンスを挙げてみると以下の通り。
・ウインチ、ガイドローラー、プーリーなどへの給油とワイヤー点検。(毎月)
・最下部プーリーとガイドローラー交換。(台風の水害で制御盤まで水没のため)
 水害後8年間そのまま使ったが、ワイヤー交換ついでに交換。取外した部品を点検したが異常は認められなかった。
・最下段のワイヤー交換(建搭18年目に一度)
 こう見てみると、25年もの月日をよくこれだけのメンテナンスで無事のりきってくれたと思う・・・・とは言え、まだローテーターとマストベアリングはまったくのノーメンテナンス状態。 中のグリス状態を想像してみると・・・・いやはや、どうなっているのか、怖くて想像もしたくないというのが本音。
 かと言って、このままノーメンテナンスで使い続ける方が怖い。
ローテーターが動かなくなった場合、アンテナの向いている方角にもよるが、かなりの確率で最下段までのクランクダウンが出来なくなる。 なぜかと言うと、HF用のCQアンテナのスプレッダーが我が家の屋根に当たってしまうためだ。
マストベアリングのベアリング内グリスが効かなくなると、当然だがローテーターに大きな負荷がかかり、ローテーターの寿命に影響する。 そこで、マストベアリングのメンテナンスを行うことにした。
 マストベアリングのメンテナンスはマストからベアリングを取り外して行うのが常識?
確かにネットなどで調べると皆さんそうされているようだが、それにはベアリングをマストパイプ上端から引き抜かねばならない。 この歳でφ60mmのパイプ上端まで登るのは絶対に避けたい。
 そこで発想を変え、メンテナンスをマスト上で、つまりベアリングをマストパイプに付けたまま行うことにした。 幸い当局のタワーはクランクアップタワーであり、2階ベランダから登り降り出来るのでベアリングとベランダの距離は近く、必要に応じて登り降りしてもそう負担にはならない。

 以下、簡単に作業内容をまとめてみた。
工程が多いように見えるが作業自体は簡単で、注意点はベアリングを下に落とさないよう作業することだけ。

   
断面図 写真.1  写真.2

作業前の準備
 作業はアンテナ類を一切外さず、マストベアリングのセンタリングネジ(断面図のA×3本)を緩めて作業する。 このため、作業中マストパイプはローテーターのみで支えられており、風などでマストが揺れるとローテーターのマストクランプへの負荷が大きくなる。
 この負荷によるマストクランプの破損を防ぐため、マスト足場をローテーターとマストベアリングの間(出来るだけマストベアリングに近いところ)に仮設し、タワーの四隅の柱を利用してマストパイプが揺れないようロープでしっかり固定した。

1. タワーのトッププレートにマストベアリングを取り付けているネジ(断面図のネジ@)を取り外す。
2. センタリング用のネジAを緩め、マストベアリングを少し上方に引き上げ緩めたネジを締めて固定。
3. マストのトッププレートにタオルを敷く。
理由は、マストベアリング内のベアリングが本体からこぼれても、プレートで跳ねて落下するのを防止するため。当初、段ボールか何かで簡単な受け皿を作ろうと思ったがそこまでは不要と考えタオルを敷くだけにした。
4. マストベアリングに細く切ったガムテープを2〜3か所貼る。(貼付位置は断面図参照)ガムテープをこの位置に貼る理由は、この後、ネジBをすべて外してベアリング台のみを下げるが(写真.1)、この時ベアリング台が滑り落ちて中のベアリングが飛散するのを防止するため。
5. ネジAを緩めてマストベアリングをタワーのトッププレートまで下げる。
6. ガムテープを取る。
7. ベアリングカバーをそっと上方に引き上げ、ネジAを締めると写真.1の状態になる。
写真ではベアリングを取り除いてあるが、実際には断面図のように上下二段にベアリングが敷き詰められている。カバーを外すとき、上段のベアリングがカバーに付いていたり、こぼれ落ちたりする。 当初、段ボールで受け皿を作ろうと思ったのはこのためだが、僕の場合はタオルを敷いただけで問題なかった。
8. ベアリング台からベアリングを取り出してパーツクリーナーでクリーニングする。
この作業だけはべランダで行った。 写真.2はクリーニング前後のベアリング。
写真.1はクリーニングしたベアリング台の様子。 ベアリング台は上下の二つの部品で構成されている。
9. 下部ベアリング台にベアリングをセットする時、上部ベアリング台が邪魔になるので一旦上部ベアリング台を上方に引き上げ、ガムテープでベアリングカバーに固定する。 
10.  下部ベアリング台に薄くグリス(僕の場合はリチウムイオングリスを使用)を塗った後ベアリングを載せ、セットしたベアリングにグリスを適量塗布する。
11.  上部ベアリング台とカバーを留めていたガムテープを剥がし、上部ベアリング台を下部ベアリング台に押し付ける。
12.  10.と同じ要領で上部ベアリング台にベアリングセットと給脂を行う。
13.  ネジAを緩めてベアリングカバーを下げてベアリング台に合わせ、ガムテープで再び固定。
この時、カバーのネジ穴とベアリング台のネジ穴の位置を合わせておく。
14.  マストベアリングを上方に引き上げ、ネジAを軽く締めてからネジBを締め込む。 これで万一ベアリング台を落としても部品は飛散しないのでガムテープを外す。
15.  トッププレートに敷いたタオル又は受け皿を取り除きマストベアリングを下まで下げる。
16.  ネジ@でトッププレートとマストベアリングを固定。
17.  ネジAでマストパイプのセンタリングを行って終了。
18.   作業前の準備で取り付けたマスト足場と固定用のロープを取り外す。

 マストベアリングのメンテナンスを行う場合、最近の一部の商品を除いて、前述のとおりマストパイプからマストベアリングを取り外して作業するのが一般的。 ところが、マストパイプが長かったり、アンテナを何段もセットしてある場合、この作業は大変な負担となる。 そのようなことから、今回のようにいっそマストベアリングを取り外さずに作業する方法を試みてみた。 実際作業してみると意外に簡単、短時間で作業を完了出来た。 マストベアリング分解時にベアリングほかの部品の飛散や落下を確実に防止したい場合、段ボールを使って右図のような受け皿を製作しておく方法がある。
 マストパイプの径を測っておき、段ボールにこの径の穴を開けておく。 四方を折り曲げてガムテープで留める。 図中の赤線部分をカットしておけば、赤破線部分から左右に開くことが出来るのでマストパイプに挟み込んだ後、ガムテープで留めておく。
 念のため、タオルを皿の中に乗せておくとベアリングが皿内に落ちても飛び跳ねることがない。

 なお、マストベアリングはメーカーによりいろいろな物があるので、この方法がどのような場合でも有効かは判りません。もし、この方法を試みられる場合、事前にご使用のマストベアリングの構造を十分理解されたうえで作業してください。
また、言うまでもないことですが、高所作業になるのであらゆる安全に考慮して下さい。 この記事は如何なる危険、および被害に対しても責任を負うものではありません。

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