リストア 架台
作業内容はヨーク部の再塗装と駆動部のクリーニング及び給脂。
三脚も奇麗にしたいところだが、長い年月の経過でいい味が出ているのでここはそのままにしておこう。
●ヨーク部
まずは水平回転部のクリーニングを行い、その後グリスアップ。
水平微動部の歯車部も同じ作業を行い、この部分へはリチウムイオングリスを適量だけ塗布。 微動調節用ハンドル軸の錆を落としてここも塗装。 ハンドルは木製で、これはそのままの現状放置とする。
ヨーク本体はせっかくの梨地現行塗装を剥離するのは勿体ないし手間なのでシンナーでの拭き掃除後、我が家の補修用にストックしている水性黒ペイントを刷毛塗りする。
●垂直調節棒
これにペイントを塗るのは避けたい・・・と言うのも、使っているうちにペイントが剥げてくるのは目に見えている。 メーカー在職時代に付き合いのあったメッキ屋さんでクロームメッキしてもらう方法もあるが、ここだけピカピカというのは好きではない。 そこで思いついたのがガンブルーの塗布。 昔、モデルガンに塗って本物のガンの風合いを楽しんだもんだ。
垂直微動部はテフロンオイルを微量だけ塗布したが、これで動きが見違えるようにスムースになった。
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駆動部をクリーニングした状態 |
水平微動部 |
架台のリストア完了 |
調整〜リストア終了
●光軸調整
これでリストアの作業は完了とし、残るは光軸調整とファインダーの調整。
光軸調整、これをしっかりやらないと折角リストアした望遠鏡も本来の能力を発揮してくれない。
つまり主鏡でとらえた像を真っすぐ正確に斜鏡に当て、ここから直角にアイピースへと導くよう主鏡セルと斜鏡に付いている調整ネジで調整する作業。
この作業を行う前に、まずは主鏡と斜鏡にちょっとした細工をしなければならない。
つまり、主鏡と斜鏡の中心点にマーク(センターマーク)をつけなければ、像がどの角度で斜鏡やアイピースに入っているのか判断できない。 そこで、まずは主鏡口径と同じサイズで型紙を作り、この型紙にセンターを出してからその位置に小さな穴を開ける。 それからこの型紙を主鏡の上に置き、開けた穴に油性マジックを押し付ける・・・・こうすると主鏡の真ん中に黒いドットが入る。 同じ要領で斜鏡にもセンターマークを付ける。
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主鏡のセンターマーク |
主鏡調整ネジ |
光軸調整に使う道具 |
実際の光軸調整は主鏡セルと斜鏡の調整ネジで行うが、最初は接眼部に何も付けずに大まかな調整を行い、その後、光軸調整アイピース(上右端写真の中及び下のもの)で最終調整する。 僕が望遠鏡を使っていた1970年初頭にはレーザーコリメーターなどと言う便利なものは無かったので、ものは試しと買ってみた(上右端写真の上)。
実際の調整ではレーザーコリメーターの出番もなく、調整完了後に確認的に使用しただけであった。 僕には最新機器より昔ながらの方法の方が素早く調整出来たようだ。
●ファインダーの調整
我が家のベランダからは遠くにお城を望むことができる。
このを城を望遠鏡内にとらえて、ファインダーのレティクル(十字線)の中心がお城の中心に来るよう調整する。
その後、実際に月や星で精度を追い込むわけだが、まずは月で試してみると全く問題なくファインダーで合わせた位置でアイピース内に月が導入されている。
続いて木星で試してみると・・・・やはりこれは一発でと言う訳にはいかないが、導入自体は簡単に完了。
素早くファインダーを調整し、いったん任意の方向に望遠鏡を向けたのち再びファインダーを木星に向ける。 これがやはり、少しだけずれてくる。 何度かこれを繰り返して調整は終了。
●リストア終了
鏡の再メッキに出していた間を除き、実際の作業は土日の二日で完了した。
我が家にやってきたときの状態に比べると、まるで別物のように奇麗になった。 心配していた主鏡の曇りの影響も、ファインダー調整でテスト的に覗いた限りでは問題なさそうだ。
こうやって天体望遠鏡で星空を眺めるのは何年ぶりだろう。
二十数年前、長女の誕生日に口径10cmの反射赤道儀をクリスマスプレゼントで買ってあげたとき、使い方を教えがてら家族と星を見て以来になるかな。
この望遠鏡を貰って、鏡の再メッキの件で西村製作所に問い合わせを入れたとき、ついでに製番を知らせて製作年を聞いてみたが昭和27製作ということだった。 東京墨田区の小学校に教材として出荷されたものとのこと。
どのような経緯でこの地にやってきたかは不明だけれど、この望遠鏡の前の持ち主はすでに他界されてその後は倉庫に放置されたままになっていたようだ。 鏡筒内の錆から考えると、冬場の観測後、暖かい室内に移動させて鏡筒蓋を閉めてそのまま何十年か放置されていたのだろう。
先に、この望遠鏡は小中学校時代の憧れのものだったと書いた。
何故かというと、僕もいつかは鏡を自分で磨いて望遠鏡を作りたいと思い「反射望遠鏡の作り方」という本を買った。
この本の中にこのタイプの写真があって、反射望遠鏡と言うとこのスタイルが今でも真っ先に僕の脳裏に浮かんでくる存在であり続けている。 結局、鏡を自分で磨いて作るという夢は未だ叶っていないのだが。
いずれにせよ縁があって我が家にやってきた古い望遠鏡。
とにかく重くて、気楽にベランダに持ち出して星を見ようという気にはならないのだが、まあ、これから長くお付き合いしてゆこうと思う。 そうそう、これをくれた同級生に月を見せてあげなければいけない。
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