クランプアップタワーのプーリー交換

台風23号

 2004年10月、マリアナ諸島近海で発生した台風23号は20日の昼頃に高知県に上陸した。
会社の前を流れる川の水位は非常に高かったものの、国道まではまだ余裕があった。 定刻に仕事を終え、水位が異常に増した川の流れを下に見ながら自転車で帰路についた。
 会社から僕の家へは自転車で5分以内のところ。
橋を渡って下り坂を下りて狭い路地に入ると、その先はもう冠水していた・・・・・とは言え、自転車で走れない深さではない。 そのまま進むとみるみる水位が上がり、自転車に乗って走れる状態ではなくなってきた。 自転車から降りてなおも進むが、みるみる水は僕の腰より高いところまで到達する。
 やばいなあ・・・・と思いながらも今更戻れない。
電信柱や左右の家など、いざとなった場合のことを考え、ポイント毎に避難できそうな場所を確認しながら進むと、県道に出るころには水位も低くなり、県道はまだ冠水していない。
 家に帰った僕は家族全員がいる事を確認し、すぐに荷物を2階か3階に上げるよう家族に指示した。 そう、このままでは床上浸水は時間の問題だと判断したからだ。

 濁流が我が家に侵入するまでにはそれほど時間はかからなかった。
まず、2つある床下収納の蓋が水圧で持ち上がる。 家族の者がこの蓋に乗って塞ごうとするが、そんな事は無駄な抵抗。 みんなに2階へ上がるよう指示し、配電盤の蓋を開け1階のブレーカーとタワーのブレーカーを全て落とした。
 2階の窓から道を見るとそこはもう道なんかじゃなく、濁流と化している。
愛車のリグだけでも取りに行きたいが、そこは命あってのものだね。 やがて、至る所から車のクラクションの音が、まるで断末魔の叫びのように聞こえてくる。

 僕が小学生だったころ、一度だけ家の前の道が冠水して床下浸水を経験している。
しかしこの台風では、我が家で床上70cmの床上浸水だった。 我が家は水害を想定して、建て替える前の家同様に床を前の道より高くしてあり、タワーの基礎はその高い床と同じレベルにしてあるのだけれど・・・・・にも拘わらず、制御BOXは完全に水没してしまった。 当然タワー最下段のプーリー、ガイドローラー、2個の下限リミットスイッチも完全に泥水の中。

水没した制御盤 玄関の様子 愛車も泥だらけ

タワー関連装置の再生

 起きてしまったものは仕方ない・・・しかも自然災害(人災だとも思っているが・・・・なぜって? 僕の日記を見ると判るけど、この水害より大分前にその可能性を感じていた)。
 
 水が引くと屋内の掃除と、制御盤内を清水で掃除して汚泥を洗い流した。 もちろん、プーリーやガイドローラーも洗い、リミットスイッチは分解して清水で綺麗に洗う。 水が乾くのを何日も待って、晴天の日、タワーの昇降テスト。
 屋内のブレーカーを入れた後、制御盤内のブレーカーを入れてから、一呼吸おいてUPスイッチを押す。
ガチャガチャガチャっとマグネットスイッチがチャタリングをはじめる。 一端スイッチを切る。 やっぱりスイッチの中に泥が入っているようだ・・・・・やばいなあ。 思い直してもう一度スイッチを入れる・・・・ガチャガチャガチャ・・・・・スイッチを切る。
 ええい、もう一回とUPスイッチを入れると、おおタワーが静かに上がって行くではないか。
でも、上がるには上がっても、停止と下降の保証は無い。 適当な高さでSTOPスイッチを押すと何の問題もなくタワーは止まった。 次は下降テスト。 DOWNスイッチを押してみたが・・・・何の反応もない。 
試しにUPスイッチを押すと上昇し、STOPスイッチを押せば停止するが、DOWNスイッチに反応がない。 
 
 愛知タワーの社長にメールでといあわせを入れると、すぐに返事をいただいた。
ブレーキ用整流器が怪しいとのことで、取り敢えずモーターのブレーキを解除してタワーを自然降下させる方法を教えて頂き、無事タワーを下降させることが出来た。
 果たして部品を取り替えるべきか?
いや、もう一週間乾燥させてからでも遅くないと考え、一週間後に再テストしてみると今度は何の問題もなく下降する。
上下動作に何の問題も無くなったが、デジタルタイマーの液晶が表示されていない。 
 これは自動下降装置のタイマーだろうか。
恐らく風速計の回転をパルスで読み込んで、タイマー設定時間内に何回回転するかで自動下降の制御をしていると思われる。 とすれば早急に必要な装置ではないので、取り敢えずは忘れることにする。

なぜ今頃プーリーとガイドローラー交換をするのか?

 水害からもう8年も過ぎている。
なぜ今頃というのもあるが、別にこれらの調子が悪くなったからと言うのではない。
交換前でもタワーの昇降は至って静かでスムーズに出来ているし、毎月一回行っている駆動部への給油と点検でも異常は認められていない。
 ただ、建塔後すでに15年以上経過し、この間、ワイヤーの交換を一回も行っていない。
と言うか、交換した部品は皆無と言うべきかな。 もちろん、全く機能面で問題が無いことは言うまでもない。
一応、毎月末の点検やタワー昇降時はかならず目視でワイヤーの点検をしており、ワイヤーのささくれなども認められなかった。 ところが、あるとき気が付いたが、モリブデン含有耐水グリスが付着している、ドラムに直接接触している部分はグリスがべっとり付いていてワイヤーの表面が直接見えない。 ワイヤーは直径10mmのSUS。 ワイヤーに給油すると埃がやゴミが付くので給油しない、いや給油不要とのことで、ドラムに直接振れる部分以外は無給油状態でワイヤーの状態確認が簡単。 従って、いつもはこの部分で確認をしていたのだ。 この部分のささくれは未だに皆無。
 試しに、このグリスを剥ぎ落としてみると、さすがにドラムに直接振れている部分は何本もの支線が切れている。
念のため写真を撮って社長さんに確認を取ってみると、写真で見る限り向こう10年は心配ないとの事。
 ただ、泥水に水没した場合、プーリーやガイドローラーに泥が入り、これが負荷となってワイヤーに大きな負担をかけている可能性はあるとのこと。  最初はワイヤー交換を考えていたが、今回はこのことが理由でプーリーとガイドローラーの交換を決定した。


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