ゼネラル 5A301 入手時の状態〜通電 「麗しの球管ラジオ」トップページに掲載してあるラジオが5A301。 このラジオは昭和20年後期から30年初期の間に発売された、5本のMT管を使ったトランスレス5球スーパーラジオ(但しフローティングアース)。 使用されている真空管のモデル番号がシャーシに刻印されている。 刻印から、12BE6 12BD6 12AV6 35C5 35W4の5本であることが分かる。 まずは3個あるツマミを取り外してから、裏蓋を取り外す。 ラジオを前に倒して、シャーシを留めてある4本のねじを外す。 普通だと、この後、まずはダイアル指針に掛けられているチューニング用の糸を外さねばならないのだけれど、軽くシャーシを動かして見ると指針も一緒に動くので一体式になっているようだ。 スピーカーコードに気を付けてラジオケースから注意深くシャーシを取り出してみる。 埃も少なく、どうやらクリーニングはされているようだ。 ケース内側側面に回路図はあるが、部品の仕様などは読み取れない部分が多い。 シャーシを裏返してみると、こちらも埃など殆どなく綺麗な状態。 ただ、付いている部品はほぼオリジナルらしく、特にコンデンサー関係や配線を見ると時代を感じてしまう。 目視だけで不具合の様子が分かるようでは、そのままスイッチを入れるのが怖いのだが、はてさて・・・・・と、おやおや、電源の平滑コンデンサー部分を見るとブロックコンデンサーの配線がアース以外すべて外されている。 これでは勿論、音など出る筈はないが、代わりに電解コンデンサーが付けられている。(赤い矢印の部分) 恐らく、ブロックコンデンサーが駄目になり、これらの電解コンデンサーに付け替えたのだろう。 仕様を見ると3個のコンデンサーすべて同じで350V耐圧の22MF。 にわか勉強の知識では、平滑部のコンデンサーには20MF程度が一般的で、あまり大きいのを使うと整流管を痛めると書いてあった。 それからすると、まあこちらは問題ないのだろう。 目視した限りはコンデンサーや抵抗で問題ありそうな物は見あたらないが、配線で被覆の一部が劣化のためひび割れ、中のメッキ線がむき出しになっている部分もある。 特に出力トランスへの配線部分はひどい状態だ。 念のためテスターで導通状態、短絡の有る無しを調べてみる。 出力トランス、各真空管の3番4番ピンまでの導通、パイロットランプ系、ついでにランプのフィラメントが切れてないか、それからヒューズは・・・・おっと、結構容量の大きなヒューズが入っている。 このままではヒューズの役目を果たしそうにも無いので手持ちの0.7Aの物に変更。 最後に電源プラグの両端にテスター棒を当てて抵抗値を計ると約140Ω。 一応、回路に致命的な問題は無いと判断する(いや、祈る。) この方法は、購入した「こだわりの真空管ラジオ作り」に書かれていたもので、他にも色々この本やインターネットのサイトを参考にさせて貰った。 以上の点検後、いよいよ通電。 前ページで書いた通り、音はちゃんと出てくるがボリュームを絞りきってしまうとハム音が耳に付く。 ハムの原因と言えば、平滑コンデンサーかカップリングコンデンサーの容量抜けかアース系の結線不良か? さっきの平滑用コンデンサー、本当に22MFで良かったのだろうかと念のためブロックコンデンサーボディーに刻印された仕様を見てみると次の通り。 180WV 60MF 180WV 40MF 180WV 3MF 60MFが恐らく整流管から出て最初のコンデンサーだろうから、22MFのコンデンサーを付けたのでは容量抜けした状態と同じだ。 これではハム音が出て当然。 すぐに交換したい所だが、僕は工作派のハムではなかったので、手持ちで近い容量の部品など有るはずがない。 しかも、出来ればブロックコンデンサーで納めたい。 3個もの電解コンデンサーをこんな風に取り付けることはしたくないのだ。 早速、インターネットでブロックコンデンサーを漁ってみるが、どうにも良いのがない。 困ったときのオークション。 今度はオークションで調べてみると、幾つかヒットしてきた。 一つは、「カナリア」から取り外したと言う中古ブロックコンデンサーで60・40・20と申し分無いが、使えるかどうかは?とある。 これでは怖いのでパス。 さらに見ていくと、20MF×6で耐圧250V、しかもテスト済みとある。 しかも、オークションIDから出品者は相当年期の入ったアマチュアハムとすぐに分かる。 これなら心配無さそうだ。 結局200円で落札して、定形外で発送を依頼した。 すぐに送られて来たブロックコンデンサーには数十個の新品LEDも同封されていた。 恐らく、自作か何かをすると解釈した出品者が好意で入れてくれたのだろう。 200円の落札にこれだけの物を送ってくれたんじゃあ、相手の方、返って赤が出ている計算になる・・・・・やっぱ、知らない相手とは言えハム仲間はいいもんだ。 オークションでの落札と平行して、「ラジオ少年」へ予備真空管とポリバリコン、5球スーパー修理用CRセットを注文、それから秋葉原のパーツ屋さんへ耐熱線と錫メッキ線、それに絶縁用のエンパイアチューブを注文。 レストア開始 翌週末、ハムを止めるための修理と、劣化部品の交換を実施。 まずは真空管を外し、スピーカーコードを出力トランスから外す。 次にブロックコンデンサーの換装のため、既存の物を取り外し、落札したブロックコンデンサーを取り付けるのだが、既存の直径が25mmに対し落札したのは30mm。 既存のブラケットでは取り付け出来ず、購入時に付いてきたブラケットを使うことにする。 ただ、ねじ穴の位置が違うので新たに2カ所開けなければならない。 と言って、手持ちの電気ドリルはあまり使いたくないので、ここは一番力技でと、ピンバイスで開ける。 ブロックコンデンサーが無事とりついたら、縦型の電解コンデンサーを取り外してブロックコンデンサーに配線をやりかえる。 このコンデンサーは20MF×6なので、3×20・2×20と並列接続すれば60・40の容量になる。 残り20MFは3MFの部分と結線する。 その内3MFのチューブラか縦型の電解コンデンサーに換えればよい。 換装したブロックコンデンサーはさすがに同時代の物、何の違和感もない。(下の写真) この段階で、被覆が劣化している部分は新しい錫メッキ線か耐熱線に変更して結線してゆく。 他の部分で被覆が怪しい部分も新たに交換し、0.02のコンデンサーを1個だけラジオ少年で買った物に交換。 最後に出力トランスへの配線を交換。 安全を考えるとすべてのコンデンサーと抵抗を交換するのが良いのだろうけれど、これで元の音から違った音が出てもまずいので、交換部品は最小限に留めることにした。
シャーシを元に戻してスピーカーコードを半田付けし、真空管を差してからプラグをコンセントに差し込む。 さあて、どうだろう、直っているだろうか? 電源スイッチを入れて暫く待つと、おっ、ハム音が殆どしない。 早速チューニングダイアルを回してみると、海外の放送が結構盛大に入ってくるのだが、どうも様子がおかしい。 正面のパネルを見て気付いた。 短波(SW)になっている。 無意識にモードを切り替えていたようだ。 今度は中波(MW)に切り替えてみると、今度は全く音が出てこない。 なんやねん、この間は問題なく音が出てきたやんか。 やれやれと思いながら、コンセントからプラグを抜き、そのまま注意深くシャーシをひっくり返す。 前はちゃんと音が出ていたので、原因は目視で分かるようなものだろうとシャーシ内部を点検していると、100PFのチタコンが抵抗のリード線と接触している。 これを離してから再び通電するとバッチリ。 スピーカーに耳をくっつけてわずかにハム音が確認出来る程度。 しっかりMWもSWも綺麗に音が出てくる。 これで終了と、プラグをいったん抜いて、シャシーをケースに戻そうとしたその時、右手指先にいやな感触が・・・・・どうも、指に何か金属のような物に触れた感触がする。 それだけなら良いが、その金属がポキッと折れたように思うのだ。 さっそく、シャーシを裏返してみると、ヒューズホルダーが折れている。 「まったくもう」と自分に怒ってみても仕方がない。 早速、困ったときのインターネット。 ネットで買えば新品で¥60、オークションの中古で2個¥20円。 安いが、送金料や送料の方が高くなる。 田舎に住んでる者が悔しく思うのはこんな時である。 東京に住んでいる時なら、他の買い物にかこつけて秋葉原まで出かけて買ってくるし、電車代が勿体なければ自転車で買いに行けば良い。 僕は当時、片道30Km近い距離を毎日、自転車で通勤していたから住んでいた調布から秋葉原なんて大した距離ではなかった。 あまりにも馬鹿らしいので、手持ちのヒューズホルダー(電源線の中間に入れるもの)を使うことにした。 シャーシ内におさめることも可能だが、ここはもうこのホルダーの本来の取り付け方のまま使うことにする。
以上で一応のレストアは完了とし、次はPU端子を増設してCDやカセットテープの音をこのラジオで聴けるようにしたいと思っている。 ただ、気を入れて音楽を聴くのはやはりクリスキットになる訳だけれど、BGMとして音を流すのには最高。 |