30年目の約束 台 湾  2019 3/3

木に乗っ取られた家 安平(台南)

 台北、台中、台南 高雄、花蓮・・・・これらは仕事で何度も来たことがあるのだが、仕事と食事、飲み会に明け暮れる毎日だった。 東京や洲本のメーカー時代は比較的ゆったりした出張をさせてくれたお陰で、通常は仕事と遊びが半々程度の比率であった。 仕事だけするのでなく、現地の文化や歴史、何でもいいから色んな経験をしておいでと言うのがボスの口癖。 ただ、台湾だけは曹さんとの約束で仕事とお客との付き合いに徹底した。 そんな曹さんの努力もあって、彼と取引を始めて6年で彼の売り上げは東南アジアで一番を記録した。
 ちょうど僕が東京のメーカーに就職した頃に彼との取引が始まった。
工場で彼と二人、一週間の研修を受けたのが彼との縁の始まり。 僕は通訳をしながら一緒に講習を受ける。 そんなもんだから彼は僕のことを「同期の桜」「戦友」と呼ぶ。
 今回は仕事ではないので台南では二か所の観光地を訪れる。
一つは妻の希望で訪れる安平古堡、そしてもう一つは曹さんお勧めの安平樹屋。
   
安平古堡
 安平は台南の海に面した小さな町。 安平古堡は17世紀にオランダ人によって建てられた城で熱蘭遮城と呼ばれている。 やがて鄭成功という英雄がオランダから台湾を奪回したという歴史があるらしい。 妻が何故この場所を選んだのかについて聞いたことは無いが、おそらくこのような歴史に興味があっての事だろう。 まあ、僕にとっても楽しい場所ではある。 何しろ城は大好きだから。
   
 
安平樹屋
 凄いことになっている。
ガジュマルの木が建物を外から中から飲み込んでいる。 なんだか異世界に迷い込んだような、現実から離れて映画の世界にでも飛び込んだような光景。 もっとも、この建物は人が住んでいた物ではないようで日本の統治時代は大日本塩業株式会社の倉庫だったらしい。 この会社が台湾撤退後、そのまま放置され、そのうちこれらの木々が成長してこんなことになったらしい。
 写真ではわからないが、建物は結構大きくて見学路は建物の上の方まで伸びているので、この異様な様子を様々な角度から見ることができる。

高雄
 
 台南同様、ここ高雄にも多くのお客様が存在する。
高速道路を走っているとFormosa PlasticsやNan Ya Plastics,Eternal Chemicalなどの広大なプラントが見えてくる。 特に最大のFormosa Plasticsの王さんは曹さんの友人で、台湾のほか中国の広大な4つのプラントの総責任者でもある。 台湾出張では必ずこれらのプラントを訪問し、これらの工場長と朝方2時、3時まで飲み歩いたものだ。 これが毎日続く。 まあ、酒が弱い僕にとっては苦しい時間であったが、不思議と楽しい時間でもあった。
 最後に台湾へ出張した折、いつも超多忙なFormosaの王さんが「ちょっと遠いけど旨いカニがあるので食べに行こう」と誘ってくれた。 曹さんの運転で片道2時間かけて着いたのは、海辺にある小さなレストラン。 なんでも、脱皮直後のカニ(手の平ほどある)を茹でたもので、爪や足も含め殻ごと全て食べることができ、この時期しか食べられないのだと言う。
 酒に弱い僕がいつも最後まで彼らと付き合い、弱いながらもカンペイで一気飲みを断らなかったことへの王さんなりのお礼?だったように僕は思える。
 
 高雄市内を流れる愛河のほとりを散歩するが、仕事で来ていた頃はこんなにゆったりした時間は無かったように思う。 台湾以外の海外出張では毎朝6時には起き、朝食前に市内の下町を散策するのだけれど、なにせ毎晩午前様帰りで酔って帰る。 さすがに早朝から散策する元気は残っていない。 唯一、台北に戻った時だけは曹さんと食事した後は自由時間となる。
 
 蓮池潭にある龍虎搭はパクンと口を開けた龍から入って虎の口から出ると邪気を払ってくれると言われている。 この龍虎搭の近くにも同じような思想で作られた寺がある。 こちらは、龍の口から入ってお尻から出るようになっている。 下の写真中央はこの龍の体内の様子を写したもの。
 
 

 東南アジアはどの国も夜市が盛んだけれど、この台湾も同じでどの都市にも大きな夜市が幾つもある。 日本の夜店やお祭りの屋台どころの規模じゃない。 台北の士林夜市や南機場夜市、寧夏路夜市なんかはとにかくでかくて楽しい。 台湾出張の場合でも土日は時間が取れるので、そんな時は夜市に出かけた。 今回の旅でも台北と高雄では夜市に出かけ、屋台をハシゴして廻る。 ここ高雄では瑞豊夜市が僕は大好きだ。
 ただ、夜市ではくれぐれもスリに注意したい。
僕は一度も被害にあったことがないが、日本人観光客はいい鴨になっているようなのでね、くれぐれも、日本にいる感覚でいるとダメです。

 今回の旅に同行してくれた林さん、彼の職業はプロの書家であると聞かされていた。
いろいろ話している中で、もしよければ作品を持って帰るか?と聞かれた。 あまり気にしていなかったのだけれど、帰国当日、空港に向かう前に曹さんの家でお茶していた時、林さんの息子さんがブレンドしたコーヒーと共に一本の筒をプレゼントしてくれた。
 それは林さんの作品だとか。
「これは寝室には飾ってはいけないです。 普段の生活で長く過ごす部屋、リビングがいいですが玄関などでもいいです。」
まさか本当にそんなものを用意してくれたとは・・・・
 そしていつもの通り、機内で食事などしなくて良いようにレストランで食事し、空港まで林さんも同行して見送りしてくれた。

 

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