南アフリカ
さだまさし の曲の中に『風に立つライオン』というのがある。
僕が仕事でヨハネスブルグとプレトリアへ出かけた頃、まだこの曲は出来ていなかったが、アメージング・グレイスのメロディーに載って歌われるこの曲のイメージは、昔よく見た 『野生の王国』と相まって僕のアフリカに対するイメージを未だ大きく支配している。

南アへはホンコンで南アフリカ航空機に乗り換え、モーリシャス経由で行った。
最初はヨーロッパ経由で入ろうか迷ったのだが、何となくモーリシャスが気にかかり、結局、このインド洋通過コースに決めた。
通常はビジネスクラスで移動するが、遠距離の場合はファーストクラスを使わせてもらえるので長時間の禁固刑?にも絶えられる。 何せ遊びではない。
2社の取引先を訪問する内、片方はクレームに拘わる話し合いなので、相当の波乱が予想された。しかも相手はアパルトヘイト(人種遊離政策)真っ盛りの国だ。
移動で疲れてる場合じゃない・・・・・とは言え、心はルンルン気分。

ヨハネスに着きホテルにチェックインし、荷物を部屋に置いた途端にいつもの行動。
そう、カメラ持って街中に飛び出しどんどん歩き回る。 今回も地図は持たない。
ひとしきり歩いてホテルに帰ると、頭がくらくらして吐き気がする・・・しまった、ここは高地。
半時間ほどベッドに横たわってTV見てると気分が良くなった。 
    


ホテルは市街からちょっと外れた、落ち着いた住宅街のような中にある、ちょっと洒落たプチホテル。
付近を散策しても、ここいらでは何とか政策の片鱗も伺う事は出来ない。
散策していると、至る所で昔懐かしいコールタールの臭いがする。

僕が子供の頃は、木の塀や家の壁に黒いコールタールが塗られていて、銀玉や水鉄砲での撃ち合いや缶けり、馬乗りやってるとこれと同じ臭いがいつもしてたもんだ。 遙々アフリカまで来てこの懐かしさは何なんだ。 まるで子供の頃に返ったようだ。
 
僕は黄色人種なので、どんな対応を受けるのか楽しみにしていたが、取引先の相手さんいたって紳士的な対応をしてくれる。 夕食の席、レストランで白人とおぼしきウエイターが黒人のウエイターにあれこれ指図されながら働いている。 
「この国の特殊な政策について色々聞かされてましたが、認識を改める必要がありそうだね。」と何気なくその様子を見ながら彼らに呟く僕。
「いや、彼(白人)には黒人の血が混じってるんですよ。」と取引先の社長。
「しかし、今後このような制度は見直されなければならないでしょうな。」と彼が続ける。
「じゃ、その時が来たら今度は家族連れて観光旅行にきましょうか?」
「いや、あなた方日本人は特別です。」
「いやいや、色は違っても皆人間ですよ。 じっくり、我慢強く話せば分かり合える、今回の問題と同じようにね。」

翌日、この社長は僕を自宅に案内し、家族に紹介してくれた。
クラシックギターを習っていると言う長女に、もう腱鞘炎で弾けないギター持って簡単にアドバイス。 その後、一緒に夕食に出かけた。
   
 
出張先で無線のアンテナを見付けると、そこが知らない人の家でも、アポが無くとも僕はドアをノックする。 そして僕のQSLカードを見せ、何故ノックしたかを説明する。
ここでも同じ、「お入りなさい。アマチュアはみんな仲間だ」。
そこはハム同士、早速シャック(無線室をハムはこう言う)に案内され、無線機のスイッチON。 家族に紹介され、夕食もご馳走になり、明日、ケープ(ケープタウン)へ行こうと言う。
じょ、冗談じゃない、僕は仕事です。

すっかり遅くなって、おいとまを申し出ると、あと数時間すれば日本の局が入感し始めるとおもうから、今夜は泊まってきなさいと言う。 いやしかし、明日は仕事。 
歩いて帰ると言ったが、そんな危険な事はいけないと、結局、車でホテルまで送ってくれた。
         
この国から黒人のアマチュアハムの声が聞けるのはいつだろうか?
   
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